Marketing なぜターゲットがぶれる?失敗しないマーケティングターゲット設定方法 美緒香山川 2025年11月14日 Share: Facebook X マーケティング担当者として、「まずはペルソナを設定しよう」としたものの、うまく進まなかった経験はありませんか?せっかく丁寧にペルソナを作っても、チーム内や経営陣、他事業部にうまく浸透せず、気づけば“設定しただけ”で終わってしまう——。 そんな状況に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。 まず、お伝えしたいのは、ペルソナが決まらないときに、無理に設定する必要はないということです。 ペルソナは、マーケティング施策を考えるためのツールであり、「誰にどんな価値を届けるのか」という事業ターゲットを具体化する手段です。つまり、細部を詰める前に“軸となる前提”を整理しておくことが大切です。また、ペルソナは複数あって構いません。事業フェーズや顧客層によって複数設定し、状況に応じて使い分けるのが自然です。 では、なぜペルソナが決まらないのか。その多くは、ペルソナ設定の前に決めておくべきことが抜けているケースです。 ペルソナを含むマーケティング設計を始める前に、明確にしておくべきポイントは次の二つです。 >> 『マーケティング戦略が進まない人必見!フレームワークをやる前に絶対に決めるべき「アイデンティティ」とは?』 本記事では、アイデンティティが定まった後の「ターゲット設定」について、経営陣・各事業部・マーケティング担当が共通認識を持つための考え方と、実践のコツを解説していきます。 目次 ・マーケティングにおけるターゲットとは? ▹ なぜターゲットを明確にする必要があるのか ▹ ターゲットを定義するとは、「軸を持つ」こと ・事業ターゲットはマーケティングターゲットと目線を合わせるべき ▹ アイデンティティが両者をつなぐ“共通言語”になる ・ターゲット/ペルソナ/市場の違い ▹ 市場 = 事業の大きな舞台 ▹ ターゲット = その市場の中で価値を届けたい層 ▹ ペルソナ = ターゲットを“ひとりの人”として描くツール ・なぜマーケティングのペルソナ設定でつまずくのか ▹ 前提のターゲットが定まっていない ▹ チームや経営層との認識がずれている ▹ ペルソナ設定を“目的”にしてしまっている ・事業フェーズごとのターゲット設定 ▹ 中長期のゴールを見据えてターゲットを設計する ・マーケティングターゲット設定の具体例 ▹ パターン1:想いで共感を広げ、のちに“商品”で信頼を築き、“ブランド”で定着させていくモデル ▹ パターン2:ニーズの広いサービスを、段階的にフォーカスを変え展開するモデル ▹ パターン3:SaaS - ニッチから始め、実績で信頼を積み上げ、メインストリームへ拡大するモデル ・まとめ マーケティングにおけるターゲットとは? マーケティングにおける「ターゲット」とは、自社の価値を最も必要としてくれる人たちのことを指します。もっとやわらかく言えば、事業の想いを、ちゃんと受け取ってくれる相手です。 前の章で決めた「アイデンティティ」では、“どんな人たちに、どんな価値を届けたいか”を明確にしました。ターゲット設定とは、その中でも実際にその価値を受け取ってくれる人たちは誰なのかを見極める段階です。 たとえば、「忙しく働く女性を支える存在になる」というアイデンティティを掲げたとします。 その中でも、今すぐ共感し、行動を起こしてくれそうなのは—— 忙しい中でも自分らしさを大切にしたいと考える20代後半の女性かもしれない そうやって“まず最初に届く人”を見つけていくのが、ターゲット設定の出発点です。 複数の意見が出てきても大丈夫です。最初から一つに絞り込む必要はありません。 まずは候補を並べてみて、どんな人たちが自社の価値を受け取ってくれそうかを整理してみましょう。どのターゲットを最優先で強化するかは、事業フェーズごとの段階で考えるものなので、このあとであらためて整理していきます。 なぜターゲットを明確にする必要があるのか ターゲットを明確にする目的は、事業やサービスの“軸”を守るためです。 フェーズごとにターゲットを設定していく中で、多くのチームが陥りやすいのが、それぞれが“自分の思う理想顧客”を勝手に描いてしまうこと。 マーケは「SNSで話題になりそうな層」、開発は「使いやすさを求める層」、営業は「すぐ契約してくれる層」……。それぞれの視点で正しいのですが、結果としてサービスにいろいろな要素が入りすぎて、「誰にとっても便利だけど、誰の心にも響かない」ものになってしまいます。 「誰にとっても便利」に至るには、当然コストも時間もかかります。リソースが限られている中で中途半端に多要素を詰め込むと、競合があたり前に提供している機能や品質にまで手が回らず、“顧客が本当に求めている価値”を満たせなくなることがあります。その結果、「今、自分が欲しいものではない」と感じられ、せっかくのサービスが魅力的に映らなくなってしまうのです。 ターゲットを明確にすることは、“価値の希薄化”や“メッセージのぶれ”を防ぐための手段でもあります。誰に届けたいかを定めることは、同時に「何を削ぎ落とし、どの価値を一番に届けるか」を決める行為なのです。 ターゲットを定義するとは、「軸を持つ」こと ターゲットを決めるということは、単に「顧客層を絞る」という意味ではありません。 それは、自分たちの価値観や信じる方向性に“軸”を持つことです。 たとえば、あなたの事業が「誰にでも使いやすいサービス」を目指すのか、「特定の価値観を共有する人たちに深く響くブランド」になりたいのか。その選択ひとつで、発信のトーンも、伝えるメッセージも、さらには採用するチャネルさえも変わってきます。 軸が定まっていれば、何を伝えるべきか迷わなくなります。どんなトレンドが来ても、目先の数値だけに振り回されずに、「自分たちらしい選択」を取る判断基準ができるからです。 逆に、軸がないままターゲットを設定すると、「とりあえず広く届けよう」「あの層も逃したくない」といった一見ポジティブな意見が増え、結果的に方向がぶれてしまいます。 ターゲットを定義することは、「誰を切り捨てるか」を決めることではなく、「誰のために全力を尽くすか」を明確にすること。それが、マーケティングにおける“ぶれない軸”の正体です。この軸を持っているチームほど、メッセージにも商品にも一貫性が生まれ、顧客からの信頼も自然と積み上がっていきます。 事業ターゲットはマーケティングターゲットと目線を合わせるべき ターゲット設定を考えるとき、意外と見落とされがちなのが「経営が見ているターゲット」と「現場が見ているターゲット」のズレです。 経営陣が描くのは、事業全体として狙いたい市場や方向性。 一方で、マーケティングや企画の現場が描くのは、実際に商品やサービスを手に取ってくれる“リアルな人”です。どちらも間違いではありません。 でも、この二つの視点がかみ合っていないと、ブランドとしてのメッセージがぶれ、チームが同じ方向に進めなくなってしまいます。 アイデンティティが両者をつなぐ“共通言語”になる このズレを防ぐための中心にあるのが、「アイデンティティ」です。アイデンティティは、経営と現場の間をつなぐ共通の軸になります。ターゲットが迷走していると感じたら、一度アイデンティティに立ち戻ってみてください。 たとえば、経営が「社会に新しい価値を生むブランドをつくる」と掲げているのに、マーケが「今すぐ売れる人たち」にだけ目を向けてしまうと、短期的な数字は取れても、ブランドの信頼は積み上がりません。 逆に、現場のマーケティングが生活者の声を拾い上げ、「こういう層が本当に価値を感じてくれています」と共有できれば、経営の判断にも“現場のリアル”が反映され、事業としての方向性がより明確になります。 つまり、アイデンティティを軸に、事業ターゲットとマーケティングターゲットをすり合わせることで、チーム全体が同じ目的を見つめ、同じ言葉で顧客と向き合えるようになるのです。 ターゲット/ペルソナ/市場の違い マーケティングの話をしていると、「ターゲット」「ペルソナ」「市場」という言葉がよく出てきます。どれも似ているようでいて、少しずつ役割が違います。 この違いを整理しておくと、チームで話すときも、施策を考えるときも“ズレない会話”ができるようになります。 市場 = 事業の大きな舞台 まず「市場」は、経営層が決める事業の大枠です。どんな領域で戦うのか、どんな人たちを相手にしていくのか——。 たとえば「ライフスタイル市場」「働く女性向け市場」といったように、会社としての方向性や投資判断を決めるための視点になります。 この段階では、まだ“個人像”までは見えていません。どんな場所で勝負するのかというフィールド設定が「市場」です。 ターゲット = その市場の中で価値を届けたい層 「ターゲット」は、マーケティングや企画が中心となって決める部分。市場の中でも、自社の価値をもっとも必要としてくれる層を選びます。 たとえば「働く女性」という市場の中でも、“共感を軸に選ぶ人”なのか、“機能性を重視する人”なのかで、届けるメッセージや使うチャネルはまったく変わります。 ターゲットを決めることは、「どんな想いを、どんな人たちに、どう届けるか」を明確にすること。マーケティング戦略の中心にあるのが、このターゲットです。 ペルソナ = ターゲットを“ひとりの人”として描くツール ペルソナは、ターゲットの中から代表的な人物像を描く具体化の手段です。 性別や年齢、職業だけでなく、「どんな価値観を持ち、どんなシーンで行動しているのか」を想像して言語化します。 ペルソナを作ることで、チーム全体が“同じ顧客”を思い描けるようになります。「この人ならどんなメッセージが響くかな?」と考えると、コンテンツも施策もぐっとリアルになります。 ただし、ペルソナは“軸”ではなく“ツール”。前提としての市場とターゲットが定まっていないと、どんなに丁寧に作っても活きてきません。 なぜマーケティングのペルソナ設定でつまずくのか マーケティングを始めると、最初の壁としてよく聞くのが「ペルソナが決まらない」という声です。時間をかけて丁寧に作っても、実際の施策では使われなかったり、チーム内でまったく共有されていなかったり——。 でも、それは決して“ペルソナ設計が下手だから”ではありません。 多くの場合、ペルソナを作る前に決めておくべきことが抜けているだけなんです。 前提のターゲットが定まっていない ペルソナは、ターゲットを具体的な人物像に落とし込むためのツールです。そのため、前提となる「ターゲット」が曖昧なままだと、どんな人物を描けばいいのかが見えなくなってしまいます。 「20代女性向け」「30代女性向け」といった言葉だけでは、ライフスタイルも価値観も多様すぎて、焦点がぼやけてしまう。結果として、“どこかで見たような”一般的な人物像になり、現場で活用されないペルソナが生まれます。 チームや経営層との認識がずれている ペルソナ設計そのものがゴールになってしまうケースも多いです。 「ペルソナを作った=顧客理解ができた」と勘違いしてしまう。 でも、ペルソナは“仮説”です。設定した瞬間が完成ではなく、施策を通して検証し、更新していくものです。 ペルソナを作ることが目的になると、机上の人物像を守るための議論ばかりが増え、実際の顧客の声が置き去りになってしまいます。 ペルソナ設定を“目的”にしてしまっている ペルソナ設計そのものがゴールになってしまうケースも多いです。 「ペルソナを作った=顧客理解ができた」と勘違いしてしまう。 でも、ペルソナは“仮説”です。設定した瞬間が完成ではなく、施策を通して検証し、更新していくもの。 たとえば、広告やキャンペーンの反応、実際の購買傾向、アンケートやユーザーインタビューなどから得られるデータをもとに、少しずつ精度を高めていく。そうしてリアルな顧客の行動と照らし合わせながら磨いていくのが、本来のペルソナ運用です。 ペルソナを作ることが目的になってしまうと、机上の人物像を守るための議論ばかりが増え、実際の顧客の声が置き去りになってしまいます。ペルソナは常に“顧客の反応から育てるもの”と捉えるだけで、マーケティング全体の解像度がぐっと上がります。 事業フェーズごとのターゲット設定 ターゲットは、一度決めたら終わりではありません。事業が進むごとに、届ける相手も、価値の伝え方も変化していきます。 だからこそ、フェーズごとにターゲットを設定するという考え方が必要です。それは「成長のステップを描くこと」と同じ意味でもあります。 中長期のゴールを見据えてターゲットを設計する たとえば、ある事業が「5年かけて50億円規模の売上を目指す」サービスだとします。 予算もある程度確保され、長期的な成長を前提にしたプランを描ける状況です。 最終的には、高単価で売上貢献度が高い「30代共働き女性」層に向けて、3年目以降に本格的な拡販を進めたいと考えていると仮定します。ただし、その層にいきなりアプローチしても、ブランド認知や信頼がまだ十分でない段階では、響きにくい可能性があります。 そこで最初のフェーズでは、20代の新卒〜若手社会人女性をターゲットに設定。 SNSや口コミなどを通じて共感を広げ、まずはブランドを“知ってもらう層”を育てていきます。 1〜2年目(立ち上げフェーズ):共感層への浸透(20代の新卒〜若手社会人女性 3〜4年目(成長フェーズ):購買・拡販層への展開(30代 共働き女性) 5年目以降(拡大フェーズ・仮):社会的認知を高め、ブランドの定着を図る フェーズを分けてターゲットを設計しておくと、「今の施策が、未来のブランド成長のどこにつながるのか」が明確になります。 マーケティングターゲット設定の具体例 ここまでお伝えしてきたように、ターゲットは「決めて終わり」ではなく、事業フェーズや目的に応じて進化していくものです。 この章では、実際にどのようにターゲットを設定し、フェーズに合わせて広げていくのか、いくつかのパターンを例に見ていきましょう。 パターン1:想いで共感を広げ、のちに“商品”で信頼を築き、“ブランド”で定着させていくモデル アイデンティティ 忙しく働く女性に、“自分の時間を取り戻せる朝”を提案する存在 サービス・製品 時短レシピ漫画メディア/高級感ある冷凍食品ブランド フェーズごとのターゲット・展開 ・立ち上げフェーズ(1〜2年目/ターゲット:20代前半〜中盤の新卒、若手の会社員女性) SNSで「3分でできる朝ごはん」など共感軸のコンテンツを発信。忙しい女性たちに“共感と癒し”を届け、ファン層を育てる。 ・成長フェーズ(3〜4年目/ターゲット:30代前半の共働き女性) 信頼を得たファン層に向け、自社商品(冷凍食品・調味料)を展開。「時短でも心を満たす」というブランド価値を、体験として届ける。 ・拡大フェーズ(5年目以降・仮/ターゲット:30〜40代の子育て世代) 朝時間の価値提案を文化として広げ、企業コラボやメディア展開でブランド定着を目指す。 パターン2:ニーズの広いサービスを、段階的にフォーカスを変え展開するモデル アイデンティティ “無理なく続けられる健康習慣”を日常に根づかせる存在 サービス・製品 ウェルネスサプリメント/オンライン健康サポートプログラム フェーズごとのターゲット・展開 ・立ち上げフェーズ(1〜2年目/ターゲット:20代後半〜30代前半の働く女性・健康意識が高い層) 「1日を少し軽くする」をテーマに、鉄分・ビタミンなど“続けやすい基本サプリ”を中心に発信。SNSとメールで“継続のコツ”をコンテンツ化し、共感と小さな成功体験を積み上げる。 ・成長フェーズ(3〜4年目/ターゲット:30代後半〜40代の健康課題顕在層) 目的別ライン(睡眠・美容・集中)を拡充。医師監修、成分データ、ユーザーレビューで信頼を強化。定期購入・診断コンテンツ・習慣化アプリでLTVを伸ばす。 ・拡大フェーズ(5年目以降・仮/ターゲット:全年齢のウェルネス志向層・家族単位) 食事・運動・メンタルケアを含む“トータルウェルネス”へ拡張。企業福利厚生・保険連携・オフラインイベントで社会的認知を広げ、ブランド定着を図る。 パターン3:SaaS - ニッチから始め、実績で信頼を積み上げ、メインストリームへ拡大するモデル アイデンティティ “中小〜成長チームの反復業務を自動化し、創造的な時間を取り戻す相棒” サービス・製品 業務自動化/ワークフロー管理のBtoB SaaS(ノーコード連携・承認フロー・分析) フェーズごとのターゲット・展開 ・立ち上げフェーズ(1〜2年目/ターゲット:ITリテラシー高めのスタートアップ・部門内アーリーアダプター) 無料トライアルと手厚いオンボーディングで、バックオフィスやCSの“小さな自動化成功”を量産。コミュニティ運営・導入事例の公開で口コミを作る。 ・成長フェーズ(3〜4年目/ターゲット:ミッドマーケットの情報システム部・事業部長クラス) SLA/監査ログ/SAML SSOなどエンタープライズ要件を整備。ROI計測テンプレ・業務標準化パッケージを提供し、部門横断の展開を支援。指名検索と比較軸での広告を強化。 ・拡大フェーズ(5年目以降・仮/ターゲット:エンタープライズの複数部署・グループ全社) パートナー経由のSI連携・APIエコシステムを拡大。全社標準ワークフローとしての位置づけを狙い、セキュリティ認証(ISO/SOC2)・グローバル対応で採用障壁を下げる。導入効果レポートと成功事例カタログで意思決定を後押し。 まとめ ペルソナがうまく決まらないときは、ターゲットやアイデンティティに立ち戻ってください。そこには、「誰に」「どんな価値を」「なぜ届けたいのか」という原点があります。 ターゲットは一度決めて終わりではなく、事業フェーズや中長期のゴールに合わせて進化させていくもの。立ち上げ期は共感をくれる層、成長期は信頼を築く層へと、少しずつ広げていけば大丈夫です。 そして何より大切なのは、経営層や事業部など、企業全体の方針を担う関係者と目線を合わせること。チームが同じ方向を見ていれば、メッセージもブランドも自然とぶれなくなります。 >> マーケティング戦略の資料ダウンロードはこちら >> Kufuruへのお問い合わせはこちら