Marketing マーケティング戦略の基本フレームワークとは?ターゲット設計・STP・3C・4Pで筋の通った戦略をつくる 美緒香山川 2025年12月15日 Share: Facebook X 新規事業や新しい企画を任されると、「自由に考えていい」と言われたはずなのに、いざマーケティング戦略を考え始めると、何を根拠にどこから組み立てればいいのか分からなくなる——そんな経験はないでしょうか。 前の記事では、そんな状態から抜け出すための最初の一歩として、事業のアイデンティティ(=なぜこの事業をやるのか)を定めることについてお伝えしました。 >> 『マーケティング戦略が進まない人必見!フレームワークをやる前に絶対に決めるべき「アイデンティティ」とは?』 本記事では、その次のステップのマーケティング戦略を具体的に策定する方法をご紹介します。すでに事業のアイデンティティはある程度言語化できた前提で、 フェーズごとのターゲットの考え方 STP・3C・ペルソナ・CJM・4Pといったフレームワークの使いどころ 実務で迷子にならないためのコツ をまとめていきます。 目次 ・ターゲットをフェーズごとに設定する ▹ なぜフェーズごとにターゲットを変える必要があるのか ▹ 初期フェーズのターゲット設定例 ・主要フレームワークで戦略を整理する ・STP分析とは? ▹ 誰にどんな価値を届けるかを整理する ・3C分析とは? ▹ 自社・競合・顧客の関係を俯瞰する ・ペルソナとは? ▹ 理想の顧客像を具体化する ・カスタマージャーニーマップ(CJM)とは? ▹ 顧客体験を可視化する ・4P分析とは? ▹ マーケティング施策への落とし込み ・マーケティング戦略を進める上でのコツ ・まとめ:マーケティング戦略を推進するために必要なこと ▹ 抽象化と具体化を行き来すること ▹ 周囲との“共通認識”をつくること ▹ 必要なフレームワークだけを選んで使うこと ターゲットをフェーズごとに設定する アイデンティティが決まったら、次に考えるべきは「誰に届けるか」です。 “フェーズごとにターゲットを設定する”という考え方を取り入れましょう。 この段階では、ペルソナのように細かい情報を揃える必要はありません。 話していくうちに、自然と人物像が具体化されていきます。まずは、「どんな人たちに価値を届けたいのか」という方向性をチーム内で共有することが大切です。 なぜフェーズごとにターゲットを変える必要があるのか 事業は、立ち上げ初期から成長・拡大まで、フェーズによって目指す市場も顧客層も変化します。最初から「誰にでも届く」商品やサービスを狙うよりも、まずは最も強く共感してくれる層に集中した方がスピードと精度が上がります。 事業が市場に浸透していくプロセスを踏まえ、ターゲットを段階的に絞り→広げる、という設計を意識しましょう。 また、フェーズごとのターゲット設定は、自社のリソース(予算・人員・時間)との兼ね合いで考えることも重要です。 限られたリソースの中でどの層を最優先に狙うかを見極めることで、無理のない成長ステップを描けます。 初期フェーズのターゲット設定例 初年度(立ち上げ期):20代女性など、価値観が合いそうな“共感層” → SNS・口コミなどを中心に、ストーリーや想いでつながる。 成長期(2〜3年目):30代ファミリー層など、より幅広い購買層 → 実用性・利便性・信頼感を重視した訴求へ拡大。 最初から「誰でもOK」にするのではなく、“誰から始めるか”を戦略的に決めることが、最短で成果につながります。 主要フレームワークで戦略を整理する アイデンティティとターゲットが定まったら、次はフレームワークを使って戦略を整理します。フレームワークは“答えを出すもの”ではなく、“思考を整理するためのツール”です。目的を明確にして、必要なものだけを使いましょう。 STP分析とは? 誰にどんな価値を届けるかを整理する マーケティング戦略の起点となるのがSTPです。アイデンティティで定めた“存在意義”を軸に、どの市場で・誰に・どんな価値を提供するのかを明確にします。 S(Segmentation)市場を区分する 市場を属性・行動・ニーズなどで分け、自社が狙える領域を洗い出します。 T(Targeting)狙うセグメントを決める 最も共感してくれる層、もしくは初期のリソースで最もリーチできる層を選びます。 P(Positioning)どんなポジションを取るかを定義 競合との違い、自社だけが提供できる価値を明確にし、顧客の頭の中に“位置づけ”をつくります。 3C分析とは? 自社・競合・顧客の関係を俯瞰する 3Cは「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点で市場を分析する手法です。3C分析は、「どこで勝てるか」を見極めるための地図のようなもの。STPと組み合わせて使うと、自社の“勝ち筋”がより明確になります。 顧客(Customer):どんな課題・欲求を持っているか? 競合(Competitor):どんな強み・戦略を持っているか? 自社(Company):自社の強みはどこにあり、何で差別化できるか? ペルソナとは? 理想の顧客像を具体化する ペルソナとは、サービスを届けたい「理想の顧客像」を一人の人物として描いたものです。デモグラフィック(年齢・職業・年収など)に加え、価値観・行動・購買動機・情報収集方法まで具体的に整理します。 ただし、業界によって重視すべき要素(変数)は異なります。 そのため、事業の目的や販売戦略、マーケティング手法(情報の届け方)などを踏まえて、今回の事業に合った要素を取り入れて設計することが鍵です。 たとえば—— 業界 BtoC(消費財・メディア) BtoB(法人サービス) ペルソナ設計で重視する変数の例 年齢・ライフスタイル・利用シーン・価値観・SNS利用動向 職種・業種・意思決定権・課題・導入目的・予算 例:時短レシピ漫画の企画者の場合 ペルソナ:中村 彩さん(29歳・都内在住・広告代理店勤務) 家族構成:夫(31歳・会社員)との2人暮らし 生活背景:平日は帰宅が20時以降。自炊したいが、疲れて外食・惣菜に頼ることも多い 価値観:健康的な食生活をしたいけど、調理に時間をかけたくない 情報源:Instagram・YouTube・レシピアプリ 課題:手軽で美味しく、見た目もかわいい時短メニューが知りたい ニーズ:「“自分でも作れるかも”と思えるリアルな漫画レシピ」を求めている このように、ペルソナを明確にすることで、コンテンツのトーンやビジュアル表現、配信チャネルの選定が具体的に見えてきます。 カスタマージャーニーマップ(CJM)とは? 顧客体験を可視化する CJMは、顧客がサービスを知る→興味を持つ→利用する→ファンになるまでの体験を時系列で整理するフレームワークです。 ✓ フェーズ 顧客の行動・心理 接点(チャネル) 改善・強化ポイント ✓ 認知 SNSでレシピ動画を見て興味を持つ Instagram / TikTok 短尺・ビジュアル重視の投稿で「保存したい」を狙う ✓ 興味・比較 実際にレシピを検索・漫画を見る 自社サイト / note 漫画内に「材料リンク」や「時短術」を入れて価値訴求 ✓ 体験 実際に作ってみる・感想を投稿 自宅 / SNS 再現しやすい・投稿したくなる設計を意識 ✓ 継続・ファン化 他のレシピも読む・友人に共有 LINE / メルマガ 継続フォローや季節テーマ特集で再訪促進 4P分析とは? マーケティング施策への落とし込み ここまでの分析結果をもとに、具体的な施策へ落とし込む段階です。4P分析は、「顧客に価値をどう届けるか」を4つの視点で整理するフレームワークです。このとき、判断の軸は常にアイデンティティとターゲットです。 要素 意味 時短レシピ漫画の例 Product(商品) 提供する価値・体験。商品そのものだけでなく、顧客が得る“価値体験”を定義する。 「疲れていても作れる・共感できる日常」をテーマにした3分漫画レシピ。読むだけで癒やされ、実践もできるコンテンツ。 Price(価格) 顧客が納得する“価値とのバランス”を設計する。無料/有料だけでなく、時間や手間のコストも含めて考える。 無料でアクセス可能。将来的には広告・タイアップ・書籍化などで収益化。時間的コストの少なさも「価格価値」として設計。 Place(流通・チャネル) 顧客がどこで・どのように接触するかを設計する。オンライン・オフラインを問わず最適な導線をつくる。 SNS(Instagram・YouTube)を中心に配信し、LINE公式で再訪導線を設計。のちにWeb連載や電子書籍展開も視野に。 Promotion(プロモーション) 認知からファン化までのコミュニケーション設計。誰に・どんなメッセージで届けるかを明確にする。 SNS広告、インフルエンサーとのコラボ投稿、UGC(読者投稿)を促進。読者の共感を引き出す「共感型ハッシュタグ」施策を展開。 マーケティング戦略を進める上でのコツ マーケティング戦略は、一度立てたら終わりではありません。実際に動かしていく中で何度も見直し、磨き続けることが必要です。 大切なのは、抽象化と具体化を行き来しながら少しずつ精度を上げていくこと。最初から完璧を目指さず、仮説を立てて動き、結果をもとに修正していく姿勢が成果につながります。 考えが止まったときは、情報をインプットして“頭の材料”を増やすか、STPや3Cなどの他のフレームワークに立ち返って整理してみましょう。 そして、戦略は一人で抱え込まず、関係者との対話を通じて共通認識を育てることが重要です。 マーケティング戦略は「作るもの」ではなく、「育てていくもの」。チーム全体で少しずつ言葉を磨きながら、自分たちらしい形を築いていきましょう。 まとめ:マーケティング戦略を推進するために必要なこと マーケティング戦略が止まってしまう原因の多くは、「考えるべきことが多すぎて、どこから手をつければいいかわからない」という状態にあります。その停滞を突破するために大切なことは、次の3つです。 抽象化と具体化を行き来すること マーケティングは、抽象化(方向性の確認・仮説)と具体化(リサーチ・施策・数字)を行ったり来たりしながら精度を上げるプロセスです。 「考える → リサーチ → 施策 → 振り返り → 再考」という循環を回すことで、戦略は徐々に洗練されていきます。戦略づくりは“考えること”ではなく、“磨き続けること”。自分たちらしいマーケティングを形にしていきましょう。 周囲との“共通認識”をつくること 一人で戦略を抱え込むと、判断基準が揺れたり、議論がかみ合わなくなりがちです。チーム内で方向性や言葉の定義をそろえることで、意思決定のスピードと精度が格段に上がります。 必要なフレームワークだけを選んで使うこと フレームワークは埋めるためのシートではなく、“考えを整理し、共通認識をつくるためのツール”です。 STP・3C・ペルソナ・CJM・4P……すべてを完璧にやろうとする必要はありません。事業フェーズや目的に応じて、いま必要なものだけを選んで使うことこそが、戦略を前に進める最短ルートです。 マーケティング戦略は、一度作って終わりではなく、情報を集めながら磨き続ける“育てるプロセス” です。 あなたのチームが、自信を持って戦略を描き、実行できるようになることを願っています。 >> マーケティング戦略の資料ダウンロードはこちら >> Kufuruへのお問い合わせはこちら